リンカーン弁護士

 コナリーは文章がうまいのだろうか? 翻訳物に関しては、当然翻訳を通じて読んでいる文章だから、細かいニュアンスに関しては分からないのだが、最近の私は文章の構造に関心がある。なので、この本はそのあたりに注意しつつ読んでみたのだが、いやはや、これが不思議な文章で、私なんぞの断じるところではないが、もしかしたら彼は目茶苦茶悪文(悪・文構造)なのかも知れない。あるいは、神がかった名文なのかも知れない。
 最近読んだいくつかの作品では、はっきりと文庫で半ページ〜2ページくらいの量で文章のブロックがあり、それは「キャサリン、オリバーの裏切りを知る」という感じで小タイトルをつけられそうな意味内容の構造体を持っている(さらにそのブロックの中に起承転結があり、さらに一つか二つの「フック」があり、読者の関心を引っぱる役割をしている)。どんな長い作品でも、このブロックの連続であり、多分、「いい作品」、読者の印象に残る作品とは、第一条件として、このブロック群のコントラストが適度に鮮明なものであることがあるようなのだ。
 ところが、コナリーの作品は、このブロックが、何故か判然としないのである。一応あるのだが、区分がはっきりとしていないというか、それぞれが解け合っていて、ブロックの切れ目の位置をなかなか読み取れない。だから、自分が何に引っぱられているのか、はっきりと自覚できない状態で、しかしぐいぐい引っぱられていってしまうのだ。そういえば、ボッシュシリーズの過去の作品で、思い返してみると一体それがどうしたと言いたくなるほどの古い事件をネタに、しかし最後まで敢然と読ませ切ってしまう作品があったが、あれも同様の「手口?」だったのかも知れない。

   とはいえ、もちろんコナリー作品なので、途中で何度も話がひっくり返るネタがあり、その意味ではもの凄いコントラスト感で、この作品も前半と後半の180度違う感はもの凄い。ちなみに、リーガルスリラーで、その意味でも今までの彼の作品とのかなりのコントラストを持っている。来年か再来年あたりに出版されそうな、この作品の主人公とボッシュ刑事の競演作品もすでに今からかなり楽しみである。(最近思うのだが、こういうのが案外、世界の自殺率を少し減らしたり、長寿命化に一役買っているのではないか? ......つまり、続きを読むまでは死なない、ということ)
 それにしても、いやいや、弁護士は大変な商売である......。人の運命を左右してしまう仕事は、宿命的なほど大変な商売なのであるらしい。教師と同じである。そのような仕事であっても、最近は多く自覚なく取り組んでいる人が多いようだが、......さてさて、自覚なく他人様の運命をクリエイトする仕事に携わっている人に、閻魔さまの笑い声は聞こえるのだろうか?

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