木でできた海

 個人的マスターピースであるキャロルだが、確かにこれはちょっと毛色が変わった作品だ。クレインズ・ビュー三部作の最終作品であるが(本当に三部作なのか?〜出版社の陰謀?)、この三部作は最初(「蜂の巣にキス」)と本作が、かなり毛色が変わっているということになる。(代わりに「薪の結婚」が、キャロル以上にキャロルっぽいという、そういえば確かにこの三作を混ぜて平均化すれば普通のキャロルにもなりそうであり、その意味では確かに三部作なのかも知れない。)

 正直に言えば「......キス」は、キャロルの終焉すら感じたのだが(だってほとんど普通の小説だったのだもの......)、「......結婚」はキャロルを模すキャロルを感じたのだが(っぽ過ぎたのだもの)、本作によってキャロルパワーが全然衰えていない、どころかパワーアップしているのを目の当たりにした。「変な小説」のキャロルだが、その変な小説世界が普通になってしまったので、さらに「変」を持ってくるという神技だ。もちろん手を触れようもない中核は今までのキャロルである。

 これはなかなか出来ることではないし、これが出来るということがクリエイトの魂に恵まれているかいないかの分水嶺になるのではないかと思う。自分を越えてより自分であるという死と再生の道行である。

 つまり、クレインズ・ビュー三部作は、三作を通して、死と再生の物語、と私は改めて発見したのだった。

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