十の罪業 RED

なんだかとんでもないメンバーの中編集である(とくに下巻、BLACKの方)。わざわざこの企画のために新作を書き下ろしたようだが、内容には色々理解の違いがあるかも。


【憎悪】エド・マクベイン


八七分署シリーズって、名前は知っていたが未読だった。56冊もあるんだと、驚愕。その新作。

作者が編者だから、これが本来のこの中編集の作品のプロトタイプなのかも。未読であるが、シリーズをコンパクトにまとめた感じ。雰囲気はいいのだが、シリーズのファンへのプレゼントみたいな感じか......。


【金は金なり】ドナルド・E・ウェストレイク


これもシリーズもののコンパクト版。ユーモアスリラー?らしい「ドートマンダー」シリーズの一篇。でも、このオフビートさは面白いかも......。

でも、「憎悪」と合わせて、これが続いたらカタログを買わされたような気になったに違いない......。


【ランサムの女たち】ジョン・ファリス


これはやっと面白かった。ネタがネタだけにかなり面白かった。ただ、やや説明不足か。個人的には、末尾にあと4〜5ページ欲しいところ。そのかわりオープニングの10ページくらいは要らない、と。

ネタ? 金持ちの画家が、モデルを一年契約で弟子兼専属モデルにするの。当然愛人か、と思うじゃない? そんで、気が狂うほど嫉妬した彼女の婚約者が今までのモデルのその後の調査をはじめると、彼女たちはみんなほにゃららで......。

芸術家をネタにした作品は面白いのが多いのだが、これもなかなかだと思う


【復活】シャーリン・マクラム


懐かしすぎなんだが、高校の頃に読んだ「暗黒太陽の浮気娘」の作者の作品。しかし、浮気娘の方は全く内容を覚えていない、それどころかSFか推理物かも忘れていた(爆)。......邦題がインパクトがあって、かなり気に入っている。

ところで、復活。これ、一種の医学物で、かなりの変格作品。解剖用の死体がない医大のために死体泥棒を仕事にした奴隷の話。描写はかなりのリアリティを感じる。黒くない黒人がいっぱい。スリラーでなくて文学だが、かなり面白かったです。


【ケラーの適応能力】ローレンス・ブロック


この作者さんは、以前に「小説入門」(だっけ?)という本だけ読んだことがあって、それは小説家の基本能力としてヴィジュアリゼーション(視覚化)を考えていることに感銘し、知人などに勧めていたのだが、不思議なことに他の著作、本業のスリラーは読んだことがなかった。

いやいや、やはり創作論が気に入ったということは作品も気に入るに違いないと、何度か本屋さんで手に取ってみたりしたのだが、立ち読みで拾い読みする範囲では、あまり食指が動かなかったのだ。

......地味なんだもの......。

それがこの中編集では、上巻中ピカイチの出来、めっけものでした。

ただ、基本的なストーリーラインは地味なのだね。でも、この人の語りの本質はストーリーの派手さではなく、小説としての世界観の完成度にあると思う。人間心理を含めて、凄まじい密度のイメージを感じるのだ。ストーリーは地味でも、濃厚な色合いや質感が感じられれば、小説は十分に読む意味がある。

冒頭の信号機の歴史をめぐる考察から、最後のゴルファーの心意気(「時間は?」)に至るまでたっぷり堪能いたしました。

しかし、やはりこの中編が単行本や文庫本で出ていたら、読んだかどうか分からない。その意味で、編集モノもいいものだな、と今さらながら気づいたのだった。



......というわけで、上巻はおしまい。あまり作品を読んだことのある作者がいなかったのだが、下巻は大変なのだ。......ジェフリー・ディーヴァーとキングが巻頭を飾るのだ......、をいをい......

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