2008年4月アーカイブ

薔薇物語

概念の奔流。すごいです。下世話もここまで来ればかなり宗教(ちくま文庫)

 古い古い中世の頃の作品で、まず中身も文体も古色蒼然苔カビ巌かと思ったが、これが全然違うので驚いた。基本的に、「ああ、面白かった」というのが感想である......(!)。

 作りは、アレゴリー小説というのか(韻文物語、というらしい。もちろん訳文では韻を踏んではいない。)、愛だの純潔だの気前良さだのの概念たちが、キャラクターとして登場、話し合ったり戦ったりしてお話が進んでいく。たとえば<理性>が登場、これは銀色の服を着た美しい乙女なのだが、<愛>に従わずに、自分の恋人になれと迫ってくるのだ(ここのくだりは思わず歓声をあげてしまった)。これも、ゲームやアニメの登場人物たちがパターン化し役割を与えられている昨今の文化の未来形のようにも思えないこともない。でも、ともかく<自然>や<老婆>や<歓待>や<悪口>が、それぞれ魅力的なキャラクターとして登場、あれこれ考えさせてくれてくれる。もちろん、現代人である私たちなので、作者が意図した通りに考えているわけではないと思うが......、1000年経っても人間の心理生活・世間生活で、もろもろの概念の実体が果たす役割は変わらない......。(やはり「愛」は神でしょう)

 そして、この長い物語が、概念の板野サーカスというか、上記諸概念についてはもちろん、哲学から世間智、女のたしなみから処女の口説き方まで、崇高から下世話までとんでもないダイナミックレンジで際限なく饒舌に語り続ける。これが、気持ちいいのだ。ひたすら読みたいという欲望は、食欲や性欲と同じように人間の中に確かにあると思うのだが、......つまり何かのための読書ではなく、ただ読むための読書、ということだが......、その衝動に十二分に応えてくれる。

薪の結婚

キャロルです。何も言いません、もう最高。キャロルは何書いてもキャロル。でもこれはとびきりキャロルらしい。それにつけても浅羽莢子さんはもういないんだな orz(ハヤカワ文庫)




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