カサノヴァの帰還

 個人的なことだが、私はこのところフロイトづいていて、折よく刊行が開始された全集などをぽつぽつ読んでいるのであるが、......フロイトのことはまたいつか触れる、そのフロイトに影響を与えたという小説なので手に取ってみた。カサノヴァの晩年を題材にしていて、もちろん私はカサノヴァ氏とは全然違うが(あんなにもてないし......)、しかし彼が私の10歳年上、10年経つとこうなるのかという、老衰というものを感じてある意味恐怖でした。  しかし、カッコいいのよ、カサノヴァ。賭事には強いし、でもそれをそれ程大事なことと感じてもいないあたりとか、あえて「醜悪」の中に飛び込むあたり、それから、何歳になっても女性の中だけに価値を感じているあたりとか。ゲンズブールというミュージシャンがいて、これがまぁ徹底したスケベ親父だったのであるが、晩年に「彼には嘘がない」という理由で若者に人気を博したのだが、それも事情は同じかも知れない。そこらへんは私もそのようにありたいものであるが、なかなか難しいのではある。  しかし、そんな彼の美意識も老いに負けていくのであった、......黙して目を伏せよ。  小説としては、ぐたぐた多言を弄せずほとんど俳句のような感覚で人間心理の深みを表現し、驚異的に面白かったことを言い添えておく。(ちくま文庫)

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