殺人者は夢を見るか

 最近個人的に文章家として評価が高くなってきたフロイトを、人間の心に関心のある人だったら誰でも気になる彼とユングとの関係を含めて取り込んだスリラーで、これは「やられた」という感じ。私にとっては書店で見かけてすぐに購入するほどのインパクトでした。  中身の方も作者の綿密な調査ぶりが素人目にも分るほどの正確度で、一部で有名なユングの「手を出した女患者の両親に慰謝料を請求事件」や、オカルト愛好家に有名なフロイトとの「念力対決事件」などは、ほとんどそのままの形で取り込まれていて、まるで上等な歴史物を読んでいるかのような感触。一部、あまりにもアレ過ぎてホンマかいなという感じになるところもあるのだが、本筋のスリラー部分よりも、このフロイト達実在の心理学者達の実エピソードに基づくあれこれが面白いのは、小説としての瑕疵というよりも、取り上げたネタの強烈さ、それを描写できた作者の筆力によるというわけかな。実在しない登場人物も、主役の二人は充分に魅力的で、そのジョークやペーソスが、どことなく時代がかっているのはさすが。 (講談社文庫)

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