耽溺者(ジャンキー)

コディアック君シリーズ番外編。女性描写に異様に長けている作者による、本編主人公の恋人ブリジットのお話。
......前作で化けた小説力がそのまま続いていて、やはり破格の名作。微妙にしかし、倫理的に混乱していて、それが魅力だったシリーズだが、ここへ来て良い意味での道徳小説と成長してしまった。テーマ(道徳的お説教)は、友人のために自分をダメにできますか、である。この言葉だけだと辟易するが、ダメにする、というのがなにしろ麻薬 *1 であるから話がそれほど臭くならない。主人公の努力が非常に切実な体験として響いてくる。
いい話なんだ、泣いたぞ、俺は。
そして当然ながら女性描写に長けた作者の筆はその作品中もっとも魅力的な女性キャラクターを主人公に据えて向かうところ敵無しの描写を次々と繰り出すかと思えば、そこらへんはそうでもない。その突飛な行動が男の視点から語られてこそ、この主人公の魅力は最大限に発揮されるのであるようだ。まぁここらへんはスピンオフしたキャラクター達一般に言えることだが、作品内人間関係から切り離されたキャラクターは、自分自身であることが難しいのである。さらに作者が内面にドラマの仕掛けを作ってしまったりするから、まったく独自の存在になってしまったりする。シリーズ登場時にはなかった内面の深みを備えてしまって、その深みが本編と相容れないというケースは、これは日本のアニメに多くないか? もちろん、この作者の場合はそこまでひどくはないのであるが......。
ここのところしばらくルッカが続いたが、残すところあと一冊である。それが終われば、電車の中がまた寂しくなるなぁ......。
*1 : 私の友人にモノホンの元ジャンキーがいるが、彼の体験によると数週間で薬を抜くことはけっこう可能であるらしい。しかしメンタルな面での抑制が非常に大変で、よほど意志の強い人間でないとあかんのだそうだ。禁煙程度でことごとく失敗しているあたしなんかではまるっきりダメだろう。もっともヤクどころか風邪薬も摂らない薬恐怖症なので、そんな状況にはならないとも思うが......(講談社文庫)

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